へい太郎の世界

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血圧を上げて、給料アップ!?(給料と血圧の関係) 

前回の記事の中で、”交絡”という現象をとりあげた。

繰り返しになるが、交絡とは、「注目している2つの要因それぞれに関連するような要因があった場合、見かけとして相関関係が得られてしまう」現象のことである。

これだけでは、交絡とは何かなかなかイメージできないかと思う。そこで、参考書「学会・論文発表のための統計学―統計パッケージを誤用しないために」で、とても解りやすい例示が書かれているので、ここで紹介したい。

例示は、血圧と給料の関係である。

ある会社で社員の給料と血圧をアンケート調査したところ、血圧と給料の間できれいな正の相関関係が認められたとする。つまり、血圧が高いと給料が高いという関係である。

血圧が高くなる→給料が上がる

のであれば、給料を上げたい一心で、がんばって高血圧になろう!と考える人も出てくるかのしれない。しかし、これは直感的に何かおかしいと感じるであろう。

一方、逆のパターンで

給料が上がる→血圧が高くなる

という可能性も考えるかもしれない。確かに、高給取りの人は、贅沢な食事をする機会も多く高血圧になりやすいということも考えられる。しかし近年は、給料が低い人だって食べることに困っている人は少ないと思うし、給料の肯定だけで説明つくとは考えにくい。


そこで、血圧と給料の間で、正の相関が見られたのには、
”何か他の要因が関係しているのではないか?”
と疑うことができる。

思いあたる要因があるだろうか。

そう、年齢である。

成果主義になりつつあると言ったって、まだ日本では年齢が上がるにつれて給料が高くなる。また、血圧も、年齢が上がれば高くなることが知られている。

つまり、血圧と給料、それぞれに年齢との間で正の相関があり、これによって、あたかも血圧と給料の間で見かけ上の相関関係が得られたのである。

このような状況が交絡である。
(ここでは、血圧が交絡要因)


皆さん、交絡をイメージできましたか。


ちなみに、「学会・論文発表のための統計学―統計パッケージを誤用しないために」では、交絡の他にも、面白い例示を使って、統計学の基礎について解りやすく説明されている。(多重性をノストラダムスで、外れ値を松井の年棒といった形で)

楽しみながら統計の基礎について勉強できるよい参考書だ。


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寝過ぎと持久力の関係(クロスセクショナル) 

今日の朝日新聞で、以下のような記事を読んだ。

寝過ぎ高校生 持久力劣る?
1日8時間以上睡眠をとる高校生は、6時間未満の人より持久力で劣っている傾向がある。文部科学省が8日に公表した05年度の体力・運動能力調査で、こんな結果が出た。・・・・。一方、小学生は8時間以上の方が好成績で、中学生もほぼ同じ傾向であった。



よく寝ている方が持久力があるのでは、と思う人は多いのではないか。
面白い結果だと思う。


昨日、EBMにおけるエビデンスのレベルは、研究の方法によって振り分けることができることを紹介したが、この記事のもとになった研究は、クロスセクショナル(横断研究)に該当する。いわゆる実態調査と呼ばれるものであり、ある時点(今回の記事で言うと2005年)での情報を収集し、解析するものである。

この方法の利点は、ある時点だけの情報を収集すればよいので、容易に情報を収集できることである。

ランダム化比較試験やコホート研究では、研究対象をしばらくの間追跡する必要があることを考えると、その容易さがイメージできるであろう。

他には、得られる情報が新鮮であるという利点もある。これは、ケースコントロール研究と比較しての利点である。つまり、ケースコントロール研究では、過去に遡って情報を集めるため、得られる情報にバイアスが入りやすい(記録されやすいデータしか収集できないなど)が、クロスセクショナル研究では、この手のバイアスは除くことができる。

それでは、クロスセクショナル研究の欠点はどこにあるのであろうか。

それは、この研究から得られた結果は、あくまでも相関関係のみであり、”因果関係(原因→結果)”を推定することはできないことである。

なぜなら、クロスセクショナル研究は、あくまでも1時点の調査結果であり、時間経過の情報がないからである。これが、エビデンスのレベルとして低い理由である。


さて、記事の話に戻るが、”寝過ぎ高校生 持久劣る?”という見出しを読むと、

寝過ぎ(原因)→持久力低下(結果)

というような因果関係をイメージするかもしれない。
しかし、今回の結果から解ることは、あくまでも寝過ぎと持久力低下が関連ありそうだという程度である。

例えば、

持久力低下(原因)→寝過ぎ(結果)

という可能性もある(持久力が低下していると疲れやすく、10時間以上の睡眠が必要になるとか)。


また、もう1つ重要なポイントがある。
それは、相関関係があるといったも、それぞれが原因と結果の関係であるとは限らないということである。

注目している2つの要因(持久力低下と寝過ぎ)それぞれに関連するような要因があった場合、見かけとして相関関係が得られてしまうのである(このような現象を交絡という)。

例えば今回のケースにおいて、”活動的な性格”という要因があったとする。活動的であれば、趣味も多く、結果として睡眠時間が短くなるかもしれない。一方、活動的であれば、体力もつくかもしれない。

活動的である→睡眠時間が短い
活動的である→持久力がある

この場合、睡眠時間と持久力の間で、直接の関連がなくても、お互いに相関関係が得られてしまう。活動的の例はあくまでも即席で思いついたことなので、読み流して欲しいが、とにかくクロスセクショナル研究では、”相関関係”しか得られない。

因果関係を推測するには、時間軸の情報を伴った研究デザイン(RCT、コホート、ケースコントロール)が必要である。


皆さん、クロスセクショナル研究の結果を解釈する際は、因果関係の順序や、裏に隠れているかもしれない要因をいろいろ想像してみてはいかがでしょうか。


研究デザインに詳しい参考書。
いずれも良書である。

How to Useクリニカル・エビデンス

How to Make クリニカル・エビデンス

臨床研究デザイン―医学研究における統計入門

臨床試験ハンドブック―デザインと統計解析


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「エビデンスの強さ」と「試験の方法」 

医療関係者であれば、エビデンス・ベイスド・メディスン(Evidence Based Medicine:EBM)という言葉を耳にすることは多いだろう。

EBMとは、日本語にすると”根拠に基づいた医療”あるいは”エビデンスに基づく医療”というものである。

過去を振り帰ると、効くと信じていた治療法が、実はしっかりとした根拠がなく、効かないことが後から明らかになったという事例は多くある。

つまり、治療など医療行為は、エビデンス(根拠)に基づいて行いましょう、というものである。

例えば、”昔からの慣習的な方法であるから”、”有名な先生が効くと推奨しているから”、”効いたという経験をもっているから”、と言った理由で選択している治療法があるとしたら、注意が必要である。そのエビデンスはあるのか、あるとしたらエビデンスの強さ(信じられる程度)はどの程度であるのかを吟味することが必要がある。


それでは、”エビデンスの強さ”とは、どのように判断すればよいのであろうか。

それは、その根拠の性質によって振り分けることができ、一般的には、エビデンスのレベルが高い方から以下の順序となる。

・ランダム化比較試験(RCT)
・コホート研究
・ケースコントロール研究
・クロスセクショナル研究(横断研究)
・ケースシリーズ
・専門家の意見

この他に、いくつかの試験の結果を併合したメタアナリシスという方法もある。いくつかの試験結果を集めて得られた結果の方が、単独の試験結果よりもエビデンスとしては、信頼度が高まる。

どうしてこのような順序になるのか。
それは、それぞれの試験から得られる結果の限界点による。
ランダム化比較試験が最良の方法である理由は、過去に紹介している。その他の試験デザインは日を改めて紹介予定である。


研究デザインに詳しい参考書。
いずれも良書である。

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ランダム化 

臨床試験のデザインに、ランダム化(無作為化)というものがある。

この方法を用いた臨床試験は、臨床試験の中で最も質が高いと言われる。このため、最近よく耳にする根拠に基づいた医療(EBM: Evidence-based Medicine)の根拠において、最も信頼度が高いものと認識される。

なぜランダム化を用いた試験の質が高いのであろうか。
それは、グループ間の比較の”妥当性”にかかわってくる。

例として、臨床試験で新薬の効果の強さを既存の薬と比較するケースを考える。この場合、新薬を飲むグループと、既存の薬を飲むグループを2つ作り、それぞれのグループの効果を比較することが一般的である。

この際、比較する土台として2つのグループ同士が似ていることが原則である。なぜならば、グループの性質によって薬の効果が異なる可能性があるからである。例えば、男性と女性で薬の効果が大きく異なるような領域の薬を比較する場合、グループ間で男性と女性の割合が大きく異なるとなると、薬の効果の比較は正しくできないであろう。

どのように、2つのグループ同士をよく似せることができるのか。
1つに、新薬を飲むグループを作った後に、そのグループとよく似せたグループ(1人1人に年齢や身長、体重、性別など、特徴を合せていく)を作る方法がある。これにより、グループ同士の特徴がよく似たものとなる。

しかしながら、
上記の方法には、欠点がある。
それは、どんなにグループ間の特徴を似せて作ったとしても、それには限界があるということである。つまり、似せたと思っていても、それは、測定できる特徴に限られるということである。

先程は、男性と女性で効果が違うことを例にした。
この場合は、グループ間で男性と女性の割合を合せることがポイントとなる。しかし多くの場合は、様々な特徴によって、薬の反応が異なると言える。そして、そのような薬の反応に影響を与えるような特徴は、まだ明らかでないもの(未知の特徴;例えばある遺伝子のタイプ)も含まれる。

それでは、未知の特徴も含めて、グループ間の特徴を似せることが出来るのか。

なんと、ランダム化を用いれば、未知の特徴も含めてグループ間の特徴を似せることが出来るのである。

ランダム化は、2つのグループを別々に作成するという考えに基づくのではなく、もともと1つのグループ(同じもの)を均等に分け、複製を作るという考えに基づく。グループを分ける際に、ランダムに分けるので、未知の特徴も含めて、グループ同士は平均に似ていることになる。

ランダム化を行っても、結果として全ての特徴が似ているグループが出来ないこともあるであろう。しかしながら、この方法以外には、このように未知の特徴を均等に分ける方法は存在しない。

ランダム化はすばらしい方法だ!

以下の参考書は、上記の内容も含め、臨床試験にかかわるポイントをわかりやすく書いてある。
初心者にはもちろん、臨床試験に関わって数年立った人にも、おすすめの一冊。



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